雨は終わりと共に

6/13

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
私は車の助手席に座り、先生を待った。 約束通りすぐに先生も乗り込んできて、エンジンをかけた。 雨で視界が悪い中だけど、私は先生と車でドライブ。 学校から家までの短い距離だけど、車内は2人きり。 何でも話せる。 聞きたかった事。 言いたかった事。 …今なら、何でも。 「先生、今幸せ?」 集中して運転している先生に、私はお構いなしに質問を投げた。 「なんだいきなり」 「別に。ちょっと気になっただけです」 先生はうーん、と考え、結論を出す。 「まあまあだな」 「まあまあって…」 “幸せ”って答えてくれると思ったのに。 違うのね。 「プライベートは幸せだよ。でも仕事がなあ。今少し忙しくてな」 拗ねて見せた私に、先生はすかさずフォローを入れた。 「ふーん…」 「お前が聞いたのに、ふーん、で終わりか?」 「だって…!」 先生にそうは言われたものの、私は口をつぐんだ。 その後の言葉は、勢いで言えるものではない。 「?」 先生は前を向いたまま、首を傾げた。 これ以上追求して欲しくなくて、私は咄嗟に関係ない話題へと転換する。 「先生。百合岡さんって知ってますか?うちのクラスの」 「百合岡?…ああ、あの子かな」 先生の頭に思い浮かんだようだ。 なら話は早い。 「あの子、彼氏が出来たみたいなんです」 「へえ」 今度は先生の方が興味なさそうな“へえ”だ。 事実、生徒の恋愛事情なんて先生は別に気にもしていないだろう。 「さっき私が教室で先生を待ってる時、彼女の事を多分彼氏さんが迎えに来てたんです。それでまあ一緒に帰って行ったんですけど、百合岡さんがすごい幸せそうだったんです。………いいなあ、って思っちゃいました」 先生が来るちょっと前の出来事だ。 あの時思った事を、私は先生に吐露する。 でも、すぐに後悔した。 言わなきゃ良かった。 もっと違う話題にすれば良かった。 馬鹿な私。 「…………ヒナには、そうゆう相手はいないのか?」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加