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何の気なしに、先生はそう言ってきた。
…先生には、言われたくないのに。
それでも私はぎゅっと拳を握りしめ、先生の質問に答えた。
「……いませんよ」
「そうか」
「安心しました?」
「……うん。だってお前は、大事な義妹だからな」
-----義妹。
嫌な響き。
これを言われると、私はもう何も言えなくなる。
そうですね、と小さく呟く。
そしてまた話題を変える。
「お姉ちゃん、この前ドレス選びに行ったんで私も付いて行ったんですけど、すごく綺麗でしたよ」
「ああ。俺も早く見たいなあ」
「まだ式は先ですよね?それまで見ないんですか?」
「俺はね。当日までのお楽しみって言われたよ」
先生の表情が、明らかに変わった。
途中何度かニヤついて、私に見られていると気づくとすぐに真面目な顔に切り替えて。
「先生。お姉ちゃんの事、幸せにしてあげて下さいね」
先生の様子を見るに耐えなくて、私は俯きながらそんな事を口にした。
もちろん、と即座に、堂々と断言される。
(………いいなあ)
先生に愛されている姉が、心底羨ましい。
今日は人を羨んでばかりだ。
雨だから、やはり気持ちが落ち込んでいるのだろうか。
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