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「まず膨らんだ借金を返そう。そして就職。それから返済スタートで全然構わない。毎月の返済金額も一万でも二万でもいい」
「はぁ……」
「当分ここに住めばいいしね。部屋は余ってる。二階でも一階でも、好きな部屋を貸すよ?」
「……こんなデカイ家に一人で住んでんの?」
「そう。あんまり掃除は得意じゃないから、週に一回ハウスクリーニングに来て貰ってる」
「……ピカピカなハズだね」
「もちろんここに住むのは強制じゃない。就職して住む場所が見つかったら出て行って貰う。そこから五百万の返済スタートもする。金貸しを生業にしているわけじゃないから、利息なんて取らない。だから借金が膨らむ心配もない。どう?」
「なんで……そんな慈善事業を?」
ナツの言葉に思わず笑った。
「はははっ!」
「何がおかしい? 普通思うでしょ?」
「誰にでも親切にするほどお人好しじゃないよ? ナツだからでしょ?」
ナツは一瞬言葉を飲み込み、また指の爪を噛みながら言った。
「ふーん……昔の友達だから? 緋砂ちゃん、社長のクセにそんな甘くて大丈夫?」
辛辣な物言い。喧嘩を売ってるみたいだったけれど、俺はあえてその言葉をスルーした。
「どうする? 決めるのはナツだよ」
「…………」
心底ひねくれたナツでは、俺の申し出を突っぱねるかもしれない。内心、ドキドキしていたけれど……ナツももう大人だ。分かっているだろう。この申し出を受けなければ、残るは破滅への道のみだ。
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