146人が本棚に入れています
本棚に追加
ラーメン屋は随分と狭くて汚い店だった。
大学生の頃を思い出す。懐かしい雰囲気。
ナツは財布の金で俺にラーメンを奢り、自分はラーメンを食べながらビールを飲んでいた。ラーメンもビールも大して美味くなさそうに口へ運ぶ。しかも半分程食べて箸が止まってしまった。
「もう食わないの?」
「ああ……ビールで腹膨れた」
そんな会話をして店を出た。
「ご馳走様。久しぶりにラーメン食べたなぁ。美味かったよ」
「たまには庶民の味もいいでしょ」
「はは」
車へ戻り自宅へ向かい走っていると、「コンビニ寄って」と言われた。駐車場へ入る。ナツは「待ってて」と言うと、一人で車から降りてしまった。
もしかして、そのまま姿を消してしまうのかもしれない。
一瞬、よぎる考え。
でもナツはタバコとビールを買って直ぐに戻ってきた。
「お待たせ」
「おお」
戻ってきてくれた。それがとても嬉しくて頬が緩みそうになる。
俺は唇を軽く結び、表情を引き締めた。
最初のコメントを投稿しよう!