北風と太陽

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 ラーメン屋は随分と狭くて汚い店だった。  大学生の頃を思い出す。懐かしい雰囲気。  ナツは財布の金で俺にラーメンを奢り、自分はラーメンを食べながらビールを飲んでいた。ラーメンもビールも大して美味くなさそうに口へ運ぶ。しかも半分程食べて箸が止まってしまった。 「もう食わないの?」 「ああ……ビールで腹膨れた」  そんな会話をして店を出た。 「ご馳走様。久しぶりにラーメン食べたなぁ。美味かったよ」 「たまには庶民の味もいいでしょ」 「はは」  車へ戻り自宅へ向かい走っていると、「コンビニ寄って」と言われた。駐車場へ入る。ナツは「待ってて」と言うと、一人で車から降りてしまった。  もしかして、そのまま姿を消してしまうのかもしれない。  一瞬、よぎる考え。  でもナツはタバコとビールを買って直ぐに戻ってきた。 「お待たせ」 「おお」  戻ってきてくれた。それがとても嬉しくて頬が緩みそうになる。  俺は唇を軽く結び、表情を引き締めた。
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