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ナツを同窓会の夜、家に連れ帰ってから、一週間が経とうとしていた。
髪も綺麗に整え、服も新しく買い揃えた。ゲームが好きだと言うからゲーム機も購入した。眠る場所は相変わらずカウチのままで、リビング自体がナツの部屋みたいになっていた。
それにも俺は満足していた。
ナツがここに居てくれるのが嬉しかった。
「ただいま」
「おかえり」
リビングにはカウチにもたれゲームをするナツ。タバコの匂いと空気清浄機の頑張る音。
コートを脱いで、スーツを着替える為、ウォークインクローゼットへ歩きながら話し掛ける。
「ちゃんと昼飯食った?」
「動いてないから減らない」
「そんなことないだろ?」
部屋着に着替え時計を見る。
七時か。夕飯なんにしようかな。
考えながらキッチンへ入り冷蔵庫を開けた。
出掛ける前に用意しておいた簡単な食事は冷蔵庫に入りっぱ。カップラーメンにすら手をつけていない。カウチの前のローテーブルには煎餅の袋があった。
また菓子で済ませたんだ。
しかもビールの空き缶も三つ転がっている。
「……緋砂ちゃん、仕事、まだ見つからない?」
「ん? ああ。ごめん。今週は忙しくて……もう少し待ってて?」
「ふーん……」
ゲーム画面に目を向けたままナツがボソッと言った。
「別に俺はいいんだけどね? 慌てる理由も無いし。すげーラクさせて貰ってるから」
それが本音では無い事は分かっていたけど、嬉しく感じてしまう俺。
ナツの元気が日に日に無くなっていく。
最初の拗ねて毒を吐いていたナツの方がまだ元気があった。
でももう少しだけ、手元に置いておきたいと思ってしまう。
家にナツが居る。それだけで毎日がこんなに楽しいのに、慌てて仕事探す必要がどこにあるんだろう。
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