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ナツが家に来て、三週間が経った。
「今日はいろいろテイクアウトしてきたよ。食うだろ?」
相変わらずリビングでゲームに興じるナツへカウチの後ろから話しかける。
「んー……食欲ないなぁ」
ナツは後頭部をカウチへ預け、後ろの俺を仰ぐように見つめた。昨日の夜からずっと着ている白いVネックの長袖Tシャツから覗く白い肌。艶かしく光る鎖骨に釘付けになる。
「……そ、そっか。じゃあ……俺、風呂用意してくるよ」
なんとか視線を引き剥がし、顔を背けるとナツが言った。
「好きって言えないの?」
「……へ?」
不意打ちに足が固まる。
「な、なに……が?」
「何がって、緋砂ちゃん俺のこと好きなんでしょ? こんだけしといて気付かないとでも思った?」
「え……」
頭が真っ白になって一言も言葉を返せない俺を、ナツが鼻で笑った。カウチから頭を起こし、座ったまま体ごと俺の方へ向き直ると真正面から見上げる。
「昔からそうだよ。緋砂ちゃんはさ、自分が傷付くことや、失敗しそうなことには絶対手を出さない。興味のないフリしてやろうとしない」
「……ナツ……」
「親切にするだけで、自分からキス一つも出来ない。本当……ヘタレなまんまだね?」
テレビのリモコンを掴み画面を消すと、ナツはフラリと立ち上がりバカにするように言った。
「いいんじゃない? 緋砂ちゃんはそのまま上手に生きていきなよ。俺のことなんて忘れちゃいなよ。その方が緋砂ちゃんの為だよ? 分かってるでしょ?」
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