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サッカーの特待生として、有名私立大学へ進学したナツが、右足を負傷してサッカーが出来なくなったと風の噂で聞いた時、俺は直ぐに連絡を取ることができなかった。
あんなに好きだったサッカー。落胆してるであろうナツが無理に元気な素振りをするのを想像したら、同情の電話など……。俺だったら放っておいてほしい。下手な慰めは余計に辛くなるだけ。そう思ったから。
三ヶ月後、意を決してナツへ連絡を取ろうとした。でもその時にはもう、ナツの電話番号もアドレスも変わってしまっていた。
ショックだった。そして後悔した。ナツが一番大変な時に俺はなにを躊躇してたのかと。
ナツに見限られたんだと悟った。
まさか今日の集まりにやってくるなんて想像すらしてなかった。
他の連中もナツの変わりように戸惑うばかり。久しぶりの旧友との交流を楽しみにしていたし、出来れば二次会にも参加したいと思っていた。でも、たったの二時間で酔い潰れてしまったナツを、そのままにしておけなかった。
――知ってるよ? 今、二代目社長してんでしょ? じゃさ、金貸してよ? 五百万でいいからさ。それくらい、はした金でしょ? 緋砂ちゃん
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