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ガレージから玄関までの、白玉砂利が敷き詰められたアプローチを、ナツを背負い静かに歩く。吐く息が真っ白だ。高級住宅地は今日もシンと静まり返っている。
最近、防犯の為、新しい鍵に取り替えたばかりの玄関ドア。
流線型をした銀色のドアノブ。二つあるボタンに二本の指で触れると、カチッと施錠が解除される。この鍵は車のキーと同じ仕組みだ。身に付けている人間が指で二つのボタンに軽く触れると施錠が解除される。施錠する時は上のボタンだけ触れればいい。大人を一人背負ったまま、内ポケットから鍵を取り出して鍵穴に挿すのは一苦労だったろう。こんなに早く、最新の鍵の恩恵に与るとは思ってなかった。
ドアを大きく開き、ナツの体をぶつけないように中へ入る。カチャリと閉まったドアを内側から施錠して、靴を脱ぎ、とりあえず真っ直ぐにリビングへ向かう。カウチへナツを背負った体勢のまま腰掛けて、そっとお尻に当てていた手を離した。
ズルズルズル……と、ナツがカウチへ滑り落ちていく。
ヨレヨレのジャケットを着たナツが、首を竦めて自分で自分を抱いた。
「ん……さむい……」
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