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「おはよ」
「……はよ……つーか、ここ、どこ?」
「俺の家だけど。頭痛い? 鎮痛剤飲む?」
「…………」
ナツは何か言いかけたのか口を開き、黙ったまま小さく頷いた。大きな動きは頭に響くらしい。
「直ぐに持っていくよ。座ってて?」
「…………」
ナツは左手で拳を作ると、こめかみをグリグリしながら口を尖らせ、スゴスゴとリビングへ戻った。後を追うように書斎からリビングへ入り、キッチンの食器棚の隣にある木製の棚のドアを開く。救急箱から鎮痛剤を取り出し、グラスに水を注いだ。ナツはカウチの背もたれに頭を預けグッタリと目を閉じていたけど、俺が目の前に立つと難儀そうに頭を持ち上げた。
「はい」
「……ん。で、なんで俺、緋砂ちゃんちで寝てたの?」
「覚えてない?」
カウチと布団と毛布に埋もれるように座ってたナツは、渡した錠剤を口へ放り込んで水を口に含み、頬を水で膨らませたまま、俺を上目遣いで見た。昨夜の記憶を辿っているのだろう。ゴクンと白い喉が上下に動く。生ぬるくなっただろう水と錠剤を飲み込み、ナツはやっと返事をした。
「……なぃ……」
「そうなんだ。ナツは昨日俺に、借金の申し込みをしたんだよ」
「えっ!?」
目をまん丸にして口をポカンと空け、しばし固まるナツ。俺はカウチではなく、右横の一人掛けのソファへ腰を下ろした。
ちゃんと話がしたかったからだ。
でもナツは目を伏せて「フッ」と鼻で笑うと、昨日俺を見た時と同じような蔑みの表情をした。
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