7月1日

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 妻が夏風邪気味だというので、季節外れな気がしないでもないけれどミネストローネを作ってみることにした。トマトは栄養豊富らしいし、体が芯あったまりそうだから。  好き嫌いの多い妻だから、できるだけ美味しく見えるようにしよう。好物のキャベツとジャガイモを多めにして、嫌いなお肉はやや減らす。そうなるとレシピ通りってわけにはいかなくなるけれど、まぁきっとなんとかなる。  スマートフォンと開いて、ミネストローネで検索をかけ、トップページにきていたサイトを開く。料理初心者でも簡単と書いてあった。それがなんだか癪で、やっぱり違う料理にしようかとも考えたけれど、代案は浮かばなかった。  レシピを読みながら鍋を用意して、冷凍してあった肉をレンジの解凍モードで溶かし、まな板の周りに野菜を置いて、それから調理に取り掛かる。  初心者向けというだけあってなんの山場もなし。味見をしてみたって当たり障りなく、見た目もよくあるミネストローネ。少し不手際があるくらいのほうが、食べる際の話題にできていたのに。やっぱり後悔しながら鍋に蓋をする。  それから食器棚を物色。二人暮らしを始める時に買い揃えた食器類は汚れ始めている。手前の普段使いの皿を横にスライドさせながら奥の方を覗く。妻がなぜか買ってくるせいで増え続けているマグカップが、棚のスペースを圧迫し、そのために皿が変に積みあげられている。若干不安定で、動かそうとすると、怪しい揺れ方をした。  お椀と茶碗の山の奥に、丁度いい大きさのシチュー皿が見えた。たしかあれは数年前に旅先で偶然窯元を見つけて、そこで衝動買いしたものだ。ちょっといいものだからと、最初に数回使って慎重に扱ってたら、いつのまにか存在自体を忘れてしまっていた。  奥のシチュー皿を取り出すためには一旦手前の皿を外にださないといけない。少し面倒だし危なっかしい。けれどやっぱりその皿を使うことに。たまには使ってやらないと、皿だって可哀そうだ。  苦労の末取り出したシチュー皿にはうっすらと埃が被っていてそのままでは使えそうになかった。一旦洗って、キッチンペーパーで水をふき取る。元のピカピカの姿に戻った。ひときり眺めてから、鍋の横へ。  そろそろ妻が職場から帰ってくる頃だ。  はたして妻は僕の手料理を喜んでくれるだろうか?  というか風邪の状態が悪化していなければいいけど。 
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