2章 完全犯罪

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 彼女が目を見開く。  意外だったらしい。  紗川のもう一つの仕事は探偵だ。コンサルタント的に警察に協力もしており、ある程度の収入にはなっている。もちろん、事業経営とは比べようもないほどささやかだ。 「探偵って、探偵? 真実はひとつっていう、あれ?」 「真実はひとつとは言いませんが……探偵ですよ」 「へえ、探偵かあ……浮気調査とか、するの?」 「当方は刑事事件が中心ですから、浮気調査などはしません。看板も上がっていないので、そういった依頼が来たこともありませんよ」 「刑事事件? すごーい。ドラマみたい」  酒の席だ。嘘も混ざっていると思っているのかもしれない。彼女はカラカラと笑い、カクテルを飲み干した。 「あー、美味しい。ねえ、マスター。これ、おかわりくださーい」 「飲みやすくても、度数は高めです、大丈夫ですか?」 「へーき。ねえ、それより、今までどういう仕事したのか気になるなあ。いろんな事件にあったりしたんでしょ?」  紗川の仕事に興味があるのか、立て続けに質問をしてきた。 (ここに英司がいれば、差し障りのない範囲で答えたんだろうが……)  信頼関係は大切だ。 「申し訳ありません。事実上、公の下請け業者のようなものですからね。立場が弱いんです。こちらから答えられることは何もないんですよ」  下請けという言葉に思い当たる節があるのだろうか。  彼女は「それじゃ、しかたないよね」とあっさり引き下がった。  拍子抜けだ。  もっと突っ込んでくると思っていただけに紗川は驚いた。 「あはは、もっとしつこく聞いてくると思った?」
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