おまけ  探偵助手とカステラを

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 高校生の三枝には、ブランデーと言えば、強い酒に違いないという感覚的な認識しかないが、紗川の口ぶりから、この認識で間違いはなさそうだ。 「問題は、このコープス・リバイバーには、いくつものバリエーションがあるという点にある」  コーヒーケトルの細い注ぎ口から、とぼとぼと湯を落しながら紗川は続ける。 「中には、うまいとはいいがたい味になることもある」 「はあ」  視線をこちらに向けた紗川は、察しが悪いと言わんばかりに顔をしかめた。 「つまり、とんでもないのを飲まされた訳だ」 「どんなのだったんですか?」 「バーテンダーが詫びだと言ってカステラを寄こしてくるようなレベルの味だ」  いかほどのまずさなのか、未成年の三枝には想像もつかなかったが、結果的に美味しいおやつにありつけるなら何も問題はない。 「それにしても、バーテンダーと酒粕のカステラなんてイメージが結び付かないんですけど」 「知らないのか? 日本酒は繊細な酒だ。パリでも人気が高い」 「そうなんですか……うわ」  紗川の話を聞きながら、カステラを開封した三枝は思わず声を上げた。
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