1章 カフェバー

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「もし、ここの客だったら、会計時に代行を紹介しましょう。待っている間に一杯サービスすれば気を良くしてくれるかもしれません」 「そうします。良かったですよ、紗川さんが来てくれて」  店長は心底ほっとしたのだろう。ようやく笑顔を見せた。  この店は、紗川が運営するいくつかの店舗のうちの一つだ。  他はカフェだが、この店だけアルコールを提供している。  店内は歓談のささやきで満ちていた。  年齢の高いカップルや、ポジションが高そうな社会人がくつろいだ表情で笑っている。  壁際にはデザイン重視のピアノが置いてあるが、誰も気に留めていないようだった。 「席、一つ空いたところです。片づけますから待っててください」 「ああ、急がなくてもいいですよ。待ち合わせですから」  慌てて片付けようとする店長に荷物を預けて、紗川はピアノの前に座った。  椅子を引く音で、ピアノの前に誰かが座ったと気づいたのだろう。  歓談がやむ。  時間をつぶすにはちょうどいい。  鍵盤に指を乗せ、一呼吸おくと、紗川は初めの音を響かせた。 ==蛇足== 紗川の収入源はこれです。 本人は「本業:探偵(ただし金にはならない)、副業:事業経営(金になる)」と言う意識で取り組んでいます。 別の作品でこれについて触れていますので、今回はこの程度で……。 ※エブリスタ未公開、今後公開予定
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