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俺は自分の顔や身体をあちこち手で触り確かめると、鏡に写る少女もまた俺と同じ動きをした。
「おい、おい、冗談だろ」
俺は全身を見渡す為に少し洗面台から離れて、自分の姿をマジマジと眺めた。
胸には程よい膨らみが二つ、キュッと括れた腰に細っそりとしたおヘソ、その下に俺の大事なムスコは無い……変わりにツルツルのパイパンな下半身がある。
こんな可愛い子が目の前にいるのに、それが自分の姿だと、冗談にしても行き過ぎだ。
「くふは、ははははっ。わけわかんねぇ。ふはははは!」
俺はカラダから力が抜けて、その場にペタンッとへたり込む。
「うるさい! さっきから何喚いてるの、いつき!」
タカノが洗面所へ怒鳴り込んできた!
「……タカ姉」
俺は呆然としてる中でタカノの名を呼び顔を上げた。
「へ、いつき、違う? あなた、誰よ?」
いつも見知った顔では無い人物がいるのだから当然の反応。
タカノは、怪訝な顔をして俺を見下ろしてる。
「あ、あの、タカ姉。信じて貰えないと思うけど。オレだよ、樹里だ」
俺は力無く呟くように口を開いた。
「はあっ? 何言ってるの? 馬鹿にしてる? 樹里は男よ。あなた、どう見ても女じゃない」
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