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服を整えリボンを結び直して鏡に映る自分の姿を見回した。
よしっ、何処もおかしいとこないな。
それじゃ、行くか。
女子トイレを出ると、春國の姿は何処にもなかった。
ふぅぅ、良かった……でも、何だろこのモヤモヤ感は。
べっ、別に、何か期待してた訳じゃないし。
マジで、オレおかしくなってねぇか。
「ああ! もうっ! 面倒臭せぇな……全部アイツの所為だ!」
一人ぐちぐち言いながら改札をくぐる。
駅を出ると目の前に現れたのは、綺麗にアスファルトで整備されたつづら折りの坂道。
学校は坂道を登り切った高台に建っている。
真夏の坂道はまさに地獄。春國、曰く、自転車乗りには天国みたいな所らしい。
休み明けで、久々の学校だから緊張する。
こんな姿になったけど、ちゃんと受け入れてくれるかな。
「はぁ、気が重い。けど、ここまで来たから」
逃げたい気持ちを抑えて、オレは学校に向かうべく、坂道を登り始めた。
「いーつーきー」
いきなり、肩を組まれ耳元で恨みがましく名前を呼ばれた。
「ひっ! なっ春國!」
「ツレねぇぞ。いつき、勝手に先行くなんて」
春國は含み在る笑みを浮かべて言ってくる。
「はっ? トイレ出たら、お前いなかっただろ」
「俺も便所行ってたんだよ」
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