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自らを慰めるのは決まって本稽古や公演の後だった。何もないときは、襖越しにもそれが分る。極度の緊張が、彼の欲を呼び覚ますのか、舞に命をささげた業がそうさせるのか。
まだ少年だったころ、彼はよく師匠と二人きりで特訓を受けていた。稽古部屋には絶対に近づいてはならない、とお達しがあった。
弟子も、研修生もみな複雑な表情でそれを聞いていたけれど、ある時、休憩部屋にいた数人が噂話をしだし、そわそわと落ち着きなくなった。
順に部屋から忍び足で出て行き、戻ってきては興奮した様子で盗み聞きしたものを教えてくれた。
建物の端にある稽古部屋からは、変声期前の彼の押し殺した泣き声が聞こえていた。
鳴き声の質が変わったのはいつからか。
その後も、『特訓』と称するものは度々行われ、彼の舞もそれにつれて磨きがかかっていった。
妖艶で、優美。従順な身体を何者かに明け渡し、観る者の魂を喰らい尽くすような舞が十八番だった。
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