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なんども上り詰めた後、小さく口を開けて静かに寝ている様子は、昔稽古で詰めていた頃に一緒の部屋で寝起きしていた時と変わりない。
私とほぼ同じくらいの身長になってしまった躰を、起きてしまわないようにそっと抱き寄せたのに、浅い眠りを妨げたのか面倒くさそうに瞼を上げた。
「…もう用は済んだ、さっさと帰れ」
「まだ起きているのなら、明日の朝まで目を開ける気にならない位抱きましょうか」
「はっ、はは…あははは…」
乾いた笑い声と共に、投げやりな瞳に光りが宿る。
「それも、いいな。いっそもう二度と起きることがない程俺を抱けばいい」
天地のはざまで美しい鬼が舞う、その鬼を下界につなぎとめる肉体は、果てしなく淫らにわたしを喰らい尽くす。
完
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