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睦子叔母さんは申し訳なさそうに言った。冷蔵庫を開けて麦茶の残量を点検すると、すばやく替えの麦茶を仕込んだ。
「姉の私が言うのも難だけどさ、あの子はダメだね」
「ハツミ」と陸子叔母さんが呼ぶのは、三姉妹の一番下、母の妹のことだった。堅実な長女、少々冒険心の強い次女、そして三女は風来坊のような性格だと陸子叔母さんも母も事あるごとに言っていた。「そのくせどこか憎めないところがあって」と陸子叔母さんが言えば、母も「そうそう」と頷く。
悪口を言い合っているようで、どこか嬉しそうで、二人の「ハツミ」叔母さんに対する愛情が下がっている目尻から伺えた。
──きょうだいってそういうものなのかな?
一人っ子である美里は羨ましい気持ちもあり、まったく推測が及ばない部分でもあった。
ハツミ叔母さんは大学を卒業してからふらりと海外へ行き、現地で好きな人を見つけてからはその土地に居着いた。同じ人に執心しているものか、ターゲットを替えたのかはよくわからないがパートナーを見つけたという噂。しかしそこから先はほとんど音信不通で、陸子叔母さんも母も、ハツミ叔母さんの暮らしぶりを知らないありさまだった。
母の話では、美里が赤ちゃんの頃と、幼稚園ぐらいのときに会ったことがあるらしい。しかもそれは片手で足りる程度の回数だ。
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