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2.
忌引きを終えた後、そのまま夏休みに突入してしまった。陸子叔母さんたちがすべてを助けてくれていた頃は、何とか美里は人間らしい生活を保っていた。誰かと会話をすることで頭の中から母を追い出すことができた。
「夏休みの間、うちに来る?」
「これからのことは夏休みにゆっくり考えれば」
陸子叔母さんはそう提案してくれたが、美里の心は重かった。確かに陸子叔母さんの家に行けば、気も紛れるだろう。
食べるものにも困らない。大学生のいとこの亜実ちゃんも帰ってくると言っていたし──。
美里はかなり迷ったが、「少し家の片付けをしながら考えさせてください」と保留にした。陸子叔母さんは、美里の返答を尊重してくれた。
しばらく考えこむような顔をした後、
「じゃ、うちに来たくなったらいつでも連絡してね」
にこやかに言い置いて、家に帰って行った。叔母さんが考えているような顔をしている間、「美里ちゃんはこの家で奈々枝との思い出に一人で浸りたいのよね」とつぶやく心の声がはっきり聞こえるような気がした。
──そうかもしれない。でもうまく説明できない。
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