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美里は思う。母とのアルバムを広げて改めて泣いたりするのだろうか。自分で自分がわからない。
考えを掘り下げて、「いや」と思いとどまる。
一人で寝たいんだ、と美里は思い至った。
誰にも心配されず監視されず、母にすら囚われずただただ眠りたい。一日中眠りたい。
その考えに気付いてから、美里はまっすぐにベッドに向かった。そして、本当に一日中眠り続けた。
眠りの中をさまよいながら、美里は体の痛みを感じていた。背中が、腰が軋んで地味に痛い。そして夢うつつに気付いた。
──呼び鈴が鳴ってる。
意識が少しずつはっきりしていくと、甲高いチャイムがくり返し鳴らされているのに気付いた。
「……誰?」
声に出した自分の声があまりにも乾いていて、美里は二度驚いた。まるで老婆だ。
しかもチャイムの押し方が尋常ではなく、美里は「事件か?」とひやりとした。
──まさかあたしが寝ている間に火事になったとか?
幸いパジャマ姿ではなかった美里は、最悪の事態を思い描きながらのろのろと起き上った。インターフォンなどという洒落たものはない。
魚眼レンズを覗くと、そこには見知らぬ女が映っていた。
──会ったことのないお隣さん……?
美里は戸惑いつつも、恐る恐る訊ねた。
「どちらさまですか?」
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