特権

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特権

 ちやほやされる人物の特権。  それは、付き合う相手を選べること。  あたしは美人に生まれられたし、教養ってものも少しは持っていたから、そこそこ男からはモテていた。  けれど、誰も彼もが“軽すぎる”。  まるであたしに釣り合わない。  こいつじゃない。  こいつじゃない。  こいつじゃない。  あれこれ手を出し、様子を見たけど、どいつもこいつも違う。軽薄なヤツばっかりだ。  こんなヤツらに、あたしを好き勝手にさせてたまるか。  あたしはいつも、飼っていた猫を撫でながら、心の中で男どもに文句を言っていた。  けれど、食堂の隅で堂々と一人食事をしていた、あいつだけは違った。  しばらく遠巻きに見ていたけど、言葉も行動も違った。  一言で「誠実」という言葉が似合う男だった。  あたしはあいつを誘おうと、あれこれ手を打ってみた。  けれど、全部ダメだった。  どれもこれも、あっけなくいなされた。  もうどうしようもないと思ったそのとき、あたしは見つけてしまった。あいつの好きなもの――それは、猫だった。  猫は、あたしも好きだった。  そして、あいつも猫を好きだ。  これは、あいつを振り向かせる足掛かりになるんじゃないだろうか?  そう思ったあたしは、うまく利用させてもらおうと決めた。      *  決断してからは速かった。  停滞していた状況が一気に進み、あっという間に仲良くなり――そして、ようやく告白の機会をもらえた。  だから、もう迷わない。  あたしは告白の場である観覧車に、あいつと共に乗ることにした。  そして、観覧車から降りたとき。  あたしは、あいつを魅了できたことに誇りを持っていた。  あいつもあいつで、魅了されたことを「誉れだ」と言っていた。
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