不死の誓い

2/4

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
 なぜ、あなたが死ななければならないの?   あなたは不死。わたしがあなたに命を授けた。そう、永遠の命を。あなたは運命を受け入れてくれたのではなかったの? いまさら違うとは言わせない。わたしがその甘美な血を吸ったとき、あなたの永遠が約束されたのよ。そう、あなたはわたしと共に神に抗い、闇の世界で生きる。あなたは納得したんじゃないの?  恨んでいるのね。あなたには家族がいた、やさしい奥さんと、生まれたばかりの赤ん坊。そんなものなにさ! わたしはあなたの愛した。その美しい横顔、繊細な指。もし私が血を吸わなかったら、あなたは歳老い、醜い姿をさらしたのよ。わたしに感謝しなさい。  ああ、なぜそんなに悲しい顔をするの。  あなたを失ったら、わたしはひとり。はてしない孤独、それがあなたに判る? あたらしい男を見つければ良いですって! あなたは判っていない。千年も続く底なしの孤独を、あなたは知りもしない。愛する絶望を。あなたはこの黒髪を愛してくれたのではなかったの? その指がやさしく何度も愛撫したこの髪を。  ねえ思い出して、わたしたちはいつも一緒。西欧、アジア、どこだろうが闇夜ならば私たちは自由。人間どもはまったく気付きもしない。なのに・・・。  この国に戻らなければよかった。あなたの家族が住むこの街に。  あなたの息子は今やお金持ち。あなたが陰で手を尽くしたのね。家族のことは忘れたのではなかったの? 住む世界が違うのよ。ましてや孫娘のために命を棄てるなんて。  お前だ、お前があのひとに孫娘が誘拐された事を話さなければ、あのひとは戦うことを決めなかったに違いない。下僕のくせにいらぬことを。お前の悪意が、へつらいのなかに見えぬとでも云うのか!  どうしても行くの? わたしは憐みを乞いはしない。行くなら勝手に行くが良い!  もうひとりのわたしは、すがりつき泣きながら愛を乞うている。なんて惨めな。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加