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ーー好きな人と同じクラスなのって、嬉しいけど困ることもあるんだ。
さりげなく視線をそらしながら、私は小さく溜め息をついた。
授業中も休み時間もお昼の時間も、ふと気付くと、目で加瀬くんを追っている。
無意識に、加瀬くんの姿を探してしまう。
今も、窓際の壁に軽くもたれながら、数人のクラスメイトと話をしている加瀬くんを見つけ、窓の外を見るふりをして、何度もその姿を自分の視界の中に入れてしまっている。
……やっぱり、カッコいいな。
立っているだけでも、どこか絵になる姿に見とれていると、
「また、見てるっ」
さつきが、ニヤニヤしながら冷やかしてきた。
「もー、梨奈ってば。そんなに見たいなら、2人の時にじっくり見せてもらえば。彼氏なんだから」
さつきには想いを確かめあったあの日のうちに、加瀬くんと付き合い始めたことを報告していた。
「一緒にいる時は、まともに顔見れないもん。フリーズしちゃいそうだから」
「え?それ、もう克服したんじゃなかったの?」
「ううん、全然だよ。でもね、加瀬くんといるとフリーズしてたのに、いつの間にか話せるようになる時があるの。
気がついたら、言葉が先に出てた……みたいに突然」
「ふーん。愛の力ってやつかな」
さつきが、感心したように言ったその時、
「おーい、加瀬」
廊下から加瀬くんを呼ぶ声が聞こえて、私は反射的にそっちの方に目を向けた。
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