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廊下には加瀬くんを呼んだ同じクラスの男子と、栗色のショートヘアーの可愛いらしい女の子が立っていた。
同じ学年ではないから、多分1年生。
パッチリとした瞳で、ちょっとベビーフェイスな顔つきは、同性の私から見てもかわいいな、と思う。
加瀬くんは彼女の姿を見つけると、「あ」という顔をして廊下へ向かって歩き出した。
加瀬くんの周りにいた男子は、興味津々といった様子で見守っている。
彼女は加瀬くんの顔を見ると、申し訳なさそうな顔をして言った。
「お昼休みにごめんなさい、先輩。迷惑ですよね。私、そういうの気が利かなくて」
しゅん、とする彼女に加瀬くんは、優しい声で話しかける。
「いや、いいよ。話してただけだから。何?」
「これ、早く渡したくて」
彼女が差し出したのは、サッカーのユニフォームがぶら下がった、携帯ストラップだった。
「うわ、これどこにあった?俺、もう見つからないと思って、諦めてたんだよね。」
「今朝、自転車置き場で見つけたんです。先輩が探してるといけないと思って、私それで……」
「わざわざサンキュ。助かったよ」
加瀬くんが、クシャッと微笑むのと同時に、彼女の頬がぽっと赤く染まった。
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