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電話で約束した日の会話を思い出して1人で照れながら、何度目か分からない着信の確認をする。
するとタイミングよく着信音と共に、携帯が光った。
慌てて、携帯を開いてドキドキしながら通話ボタンを押す。
「もしもし」
「あ、俺。ごめん、周りがうるさくて。広崎、聞こえる?」
周りに他の人達もいるようで、賑やかな声が聞こえてくる。
「うん、聞こえる。あの、合宿お疲れ様」
「ありがと。さすがにバテた。朝からずっと、練習だもんな」
(おーい。加瀬、誰に電話してんの?)
(そんなの、彼女に決まってんだろ。な?)
周りから冷やかすような声が、聞こえてくる。
「分かってるなら、邪魔するなよ」
あっさりと認めた加瀬くんのセリフに、周りから余計に冷やかしの言葉が飛び交い、受話器の向こうが騒がしくなった。
「ごめん。あいつらがうるさくて、ゆっくり話せないな」
「ううん。みんな仲良さそうだね」
「まあ、3日間で結構仲良くなったよ。あと、今日は代表選手以外も一緒に練習したから、大人数で余計に騒がしくって。
この後、みんなで何か食べて帰るんだ」
「あ、じゃあもう切らないと」
「うん、あと少しだけ。あのさ、大会の日なんだけど」
移動したのか、さっきよりも静かになり加瀬くんが話し始める。
「待ち合わせの時間遅らせたいんだ。それで、帰りも少し遅くなっても平気?」
「え?うん」
「その日、花火大会があるだろ。一緒に見に行きたいんだけど、いい?」
加瀬くんが、私と同じことを考えてくれていたことが、嬉しくて堪らない。
「っ、私も、行きたかったの」
「なら、決定。あー、余計に楽しみになってきた」
「うん」
「それじゃ、もう切るよ。ゆっくり話せなくて、ごめん」
「ううん、ありがとう」
幸せを噛みしめながら電話を切る直前、
(加瀬センパーイ、早く行きましょう)
遠くで、相沢さんらしき声が聞こえてきた。
そっか、相沢さんも一緒なんだ……。
その事に、ほんの少し胸がチクリとしたけれど、加瀬くんと花火大会に行けるという喜びでいっぱいの今の私には、胸の痛みは気にならなかった。
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