私が死んだ理由

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「三か月前にテレビで生放送された討論番組。そこで私は物理学者であるあなたと、幽霊の存在の有無についての議論を交わす予定でした。しかし、まともな議論は行われなかった。そう、あなたは最初から私の話を聞くつもりなどなかったのだ。いや、それどころか、私の研究や私の人間性を愚弄し嘲笑した。どんなにこちらが一から丁寧に説明しようとしても、あなたはその話を遮り、茶化しては私を笑い者にした。これでは、いくら私の研究が正しくても時間の無駄だ。結局、放送はそのまま終了し、私はただの変人としてテレビに映り、世の中から酷いバッシングを受けた……」 バンッという激しい音が聞こえた。スクリーンに映る私が目の前の机を叩いたのだろう。 「固定観念に凝り固まり、人の話を聞こうともしない岩のようなあなたに、今すぐ幽霊の存在を認めさせるには、もうこの方法しか残されていない。それは、あなた自身が直接、幽霊と対面することだ。私の研究結果から、この世や、特定の人物に強い恨みを持った霊魂は、死後も具体的な強いイメージを保ったままでいることが多く、生者からも観察されやすい。野村教授。私はあなたに強い恨みをもっている。必ず、幽霊としてもう一度あなたの前に姿を現すことを約束しよう。そのためなら、私は死をも恐れない。では、これから私は首を吊る。さようなら、死後にまた会いましょう」 スクリーンに映る私が立ち上がり、書斎から出ていったのがわかる。 どうやら、映像はそこで終わったようだ。 参列者が呆気にとられている中、「嘘だろ……そんなことで自殺するなんて」と狼狽している野村教授が、ふらふらと棺の方に近づいてきたのが足音でわかった。 私は棺の中で目を閉じ、自分を落ち着かせながら呼吸を止めた。ここでばれたらすべてが水の泡だ。
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