私が死んだ理由

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「幽霊の存在を頑なに否定する野村教授の前に、幽霊に扮した先生が現れる。あの様子じゃ教授は女の子のような悲鳴をあげて驚きますよ。そうなれば、理屈では幽霊はいないと思っていても、心の奥底では、幽霊の存在を否定できていないということが露呈する。視聴者も野村教授への見方が変わりますし、教授自身も前のように大きな態度はとれなくなる。そこでもう一度、西山先生と討論番組に出演してもらう。今度は野村教授も大人しく先生の話を聞くと思いますよ」 「そんなに簡単にうまくいくのでしょうか?」 「勿論、うまくいきますよ! 今回のドッキリはかなり綿密に計画しましたからね。このドッキリについて知っているのは先生と、プロデューサーである俺と、メイクを入れた四人のスタッフだけです。参列者も葬儀会社の人間も、本当に先生が死んだと思っているんですよ。成功間違いなし。あとは先生が自信をもつことだけです。企画会議のときに先生も、教授に復讐できるうえに、自分の本の宣伝もできるのなら頑張りたい、とおっしゃってたじゃないですか?」 「ええ、まあ、あのときは……」 「あのときの教授への怒りを思い出してください!俺は先生の本を読んで感銘を受けて以来、ファンの一人として先生を応援してるんです。俺が先生をあの討論番組に呼んだのは、もっと多くの人に先生の研究を知ってもらいたかったからです。それをあの野村教授がめちゃくちゃに。許せない! ね?思い出したら、腹が立ってきたでしょう?」 「ええ……まあ、確かに」 「その意気です!では、次の準備に取り掛かりましょう」 滔々とまくしたてる佐竹におされて、私はしぶしぶだが彼の後について旅館に向かった。
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