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フレデリックはゆさゆさと胸の上に乗った自分の肩を揺らした。
さほど変わらない体格とはいえ、まるで見た目の違う二人である。まして自分を起こすなどという非現実的な行為にフレデリックは嗤笑を禁じ得なかった。
「あぁ? 朝っぱらからいったいなん…あ?」
不機嫌そうな声が自身のものでないという事実に、辰巳の言葉が途切れた。次の瞬間、勢いよく金色の頭が持ちあがる。
「はあっ!? っんだこりゃ!」
「うーん…、僕の顔と声でその反応はちょっと…」
「ざけんなタコ! いったいどうなってやがんだよ!」
「さあ。僕も目が覚めて驚いたよ」
ふぅ…と小さな溜息を吐きながらフレデリックが言えば、目の前で辰巳が金色の頭をガシガシと掻く。その眉間に寄った盛大な皺に、フレデリックは僅かに顔を顰めた。
「ちょっと辰巳、僕の躰でそんな顔をしないでくれるかな。皺が出来たらどうしてくれるんだい?」
「知るか阿呆」
「それは聞き捨てならないね。僕の完璧な美貌を損なう事は、いくらキミでも許せないよ」
「だったら戻る方法考えろ」
あっさりと吐き捨ててベッドサイドのテーブルから煙草を取り上げた辰巳へとフレデリックは火を差し出した。
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