597人が本棚に入れています
本棚に追加
微かな音をたてて紫煙を吸い込む辰巳の…否、自分の姿。普段から見慣れた辰巳の仕草だが、自分のビジュアルでされる事にフレデリックは違和感どころか絶望を覚えた。どうにもオヤジくさいその姿に、むくむくと沸き上がる不満が溢れ出る。
「ちょっと辰巳。少しは僕の気持ちを考えて、もう少しスマートに振舞ってくれないかな!」
自他ともに認めるナルシシスト。完全無欠のパーフェクトヒューマン。そう周囲の人間たちに評されるフレデリックが、すべてに関して無頓着な辰巳の振る舞いを見逃すはずもない。
「いいかい辰巳。キミがキミの躰で何をしようと僕はある程度は許せる。けど、今のキミの躰は僕のものだという事を忘れないでほしいね!」
「はぁー…ったく朝から面倒くせぇな。こっちこそてめぇの躰なんぞ御免なんだよクソが」
「ああ…っ!」
ドスが利きすぎて悲壮感に欠けた悲鳴。何事かと辰巳が眉根を寄せる中、フレデリックは大げさに寝台へと突っ伏した。
「どうしよう辰巳…この上なく憎たらしい…」
「知るか。てめぇこそ俺のツラでなよなよすんな気持ち悪ぃ」
くぐもった声に吐き捨て、辰巳が長々と紫煙を吐き出す。
「しかしまぁ、どうやったら戻れんだよこれ?」
フレデリックは寝台に埋めていた黒い頭を持ち上げた。
最初のコメントを投稿しよう!