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「どうしたの?」
「……山の神さまに手を出すの、あんまり良くないよ」
辰峰神社が山の中にあるというのなら、そこにいるのは間違いなく山の神さまだろう。
山の神さまは、そのほとんどが強い力を持つ神さまだ。
私たちのような弱い化け狐じゃ、話も聞いてもらえないどころか、問答無用で食われてしまうことだってある。
だから、境内や社には安易に近寄れない。
「世良の気持ちもわかるし、反対する気はないよ。新山くんの友達を取り返せたら、嬉しいよね。でもさ、そうとう慎重にやらないと」
私は力強く頷いた。
「わかってる。それに、私はひとりでもやるよ」
「そうだろうから、止められないの。あたしは世良が突っ走らないように抑えるので精いっぱい。やばかったらすぐ引いてね。あたしには、新山くんより、世良の方が大事なんだから」
葵ちゃんの本心なのだろう。
私もこれまでたくさん葵ちゃんに助けてもらったから、彼女の気持ちを無碍にはできない。
「……うん。ありがとう、葵ちゃん」
私がそう言うと、葵ちゃんは、仕方ないというような感じで小さなため息をついた。
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