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「あっ、終わったみたいだね」
長老たちが、屋敷の奥からぞろぞろと出てくる。
みんな、狐としては一級の化け狐だ。
だけど、誰も人間と一緒に暮らすことは考えたことがない。
潔いんだよ、と葵ちゃんは言っていたけど、私は臆病なんだと思う。
「それではこれより、許可を与える者と入学する先を伝える。まずは、水仙筋の米倉美智子。入学先は鎌倉高校」
美智子ちゃんが静かに礼をする。
髪につけられた水仙の花紋がきらり、と光った。
「次は、卯月俊彦。菊の筋じゃな。入学先は東福岡高校」
俊彦くんは小さくガッツポーズを作る。
「次、遠坂葵。羽生高校」
葵ちゃんは特に表情も変えず、当然のように軽く礼をした。
首から下げられた桔梗の花紋がちゃり、と音を立てる。
そして、長老の視線はそのまま滑るようにして、私に向く。
緊張で背筋が伸びた。
「北条世良。お前も葵と同じく羽生高校を志望じゃったな。許可しよう」
「あ、ありがとうございます!」
嬉しい気持ちよりも、今は安心が勝った。
これで、私の目的に一歩近づいた。
「以上。残りの四名は今年いっぱい研鑽を積んで、また来年挑戦するように」
落ちた人たちも、見た目の年齢が若いうちはまだ挑戦できる。
だから、それほど落ち込むことはない。
集落から出る気がないのかもしれないけど。
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