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第二章 調査開始
土曜日、私はひとりで羽生駅前に立ち、総悟さんを待っていた。
葵ちゃんは用事があると言って出かけてしまったため、今日はひとりなのだ。
私は落ち着きなく服にしわや汚れがないか、しきりに確認していた。
「ごめん、待った?」
総悟さんが改札を駆け足で抜けてくる。
「大丈夫です。待っていませんよ」
一度言ってみたかったことを言えて、私は少し満足した。
今の時刻は十二時半。
昼食をとるにはちょうどいい時間だ。
「総悟さん、お昼ごはんはまだですか?」
「うん、まだ。どこかいいところでもあるのかい?」
「はい! と言っても、これから向かうところと同じなのですが」
私たちがこれから行くのは、妖怪協会の資料が保管されている場所だ。
駅前の商店街を抜け、路地裏へ入ると、住宅地の中に洋風のおしゃれな外装をした、シックな雰囲気の喫茶店が現れる。
「ここ?」
信じられない、というような顔をしている。
事前に調べていたとはいえ、私も初めて来るから少しだけ不安だ。
しかし、ここは堂々としていなければ、資料の信憑性や説得力まで揺らいでしまう。
「そうですよ。さあ、入りましょう」
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