第1章

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第1章

第1話 「日本の方ですか?」 「はい、そうですが」 僕は運転席の窓を開け答えた。 「終バスに乗り遅れて、どうしようか迷ってしまって……」 終バス? ここはツアーバスしか来ていないはずだけれど…… 「亀田麻友と申します。バースの駅まで送っていただけませんか?」 ここはイギリス、ソールズベリー平原にあるストーンヘンジ。 広大な草原に、未だ未解明の石たちが配置され、また重ねられている。 考古学者らは、この直立巨石が紀元前2500年から紀元前2000年の間に立てられたものと考えている。それを囲む土塁と堀は、紀元前3100年頃まで遡るという。 宇宙との交信場所説、そして治療場説。 治療場説の根拠として挙げられたのは、ストーンヘンジ周辺に埋葬された遺体の多くに、ひどい外傷や奇形の兆候が見られたことかららしい。 僕はこの後ロンドン・ヒースロー空港近くのホテルに向かう予定で、ブリストルでの仕事から帰る途中、バースを経由し足を伸ばし、帰路にあるここで観光をしていた。3度目の訪問である。     
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