47人が本棚に入れています
本棚に追加
「見た?」
「ええ、精神世界に取り込まれた、というのでしょうか?ですから、あの子が忘れている事も、知らない事も、私は知っております」
「・・・・・・」
「お教えいたしませんよ?」
「・・・・・・」
「そんなお顔なさってもダメです」
ちょっと頬を膨らませ、ついっと視線を反らしたゼナフィラの横顔を見て、ルトは苦笑しながらため息を付いた。
「では、ひとつだけ」
前置いた参謀は、唇に人差し指を当てて小さな声で続けた。
「我が国では合成獣キメラを許しておりません」
「えっ!?だって、シンは・・・」
「ですから、シミーヤは違法に造られた合成獣キメラなのですよ」
「・・・・・・」
「国中が知っていて、そのほとんどが合成獣キメラを憎んでいます」
「そんな・・・」
「合成獣キメラは国王に忠誠を誓っている、と、宣言する事でシミーヤの身の安全を図ってみましたが、事はそう簡単ではなかった」
亜麻色の参謀はゼナフィラの服を軽く畳みながら続けた。
「謂われない嫌がらせや暴力を受ける事は日常。その強大な力を欲して、友人を盾に脅される事もしばしば。国王でさえ、あの子を守ってやれない自分の無力さに、王座を降りようかとも考えた時期がありました」
「・・・・・・」
「国に居て死を望むほどに辛い思いをするのなら、国外に出た方がいい。そうして、国の大事にその力を使う事で、少しずつでも受け入れてもらえれば」
「・・・都合が良すぎるんじゃないのか?」
最初のコメントを投稿しよう!