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「そうですね。そう、思います。それでも、あの子には生きていて欲しかった。私も、パルシオも。どんな形であれ、生きてまた人を信じられる様になって欲しかったんです。また人を愛せる様になって欲しかった」
顔をあげたルトは、ゼナフィラに向かって微笑む。
「やっと、それが叶ったと思っています」
真っ直ぐに言われて、嬉しさと若干の不安が過る。
この参謀が本当の事を言っているとは限らないし、シンの本当の気持ちは、シンの口から聞きたかった。
それでも、ルトがシンを大事に想っている事と、シンが自分を良く想ってくれているのは確かなのだろう。
そんな事を考えているゼナフィラを、ルトは優しい眼差しで見守っていた。
ーーーパルシオに、ちょっと似ていますね。
髪の色や瞳の色ではない、魂の色。
ーーーきっと、傲慢で強引で真っ直ぐで、ちょっと夢見勝ちなところがあったりするんでしょうか・・・?
マントの留め具を調節し、ゼナフィラを促した、その時。
せっかちなノック音が響く。
ーーーこんな時に・・・。
扉を開けると、侍従がその耳に囁きかけた。
「・・・わかりました。では、ゼナフィラ様を謁見室の方へお連れしてください」
足早に去った参謀の代わりに、侍従が頭を下げた。
ゼナフィラも頷き返して、その後に続いて廊下に出る。
「ーーー」
「・・・え・・・?」
「ーーーーーー」
ーーー言葉が通じないとは、これ如何に。
困惑した国王と侍従は、顔を見合わせて冷や汗を流すのだった。
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