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この里帰り中、出来れば誰にも抱かれたくなかったから。
憎しみでめちゃくちゃにされるのも、暴力を受けるのも慣れた。
どんな酷い事をされても、体は再生するし、じっと耐えていればそのうち終わる。
そういうのは慣れっこ。
そして、そんな自分を国王パルシオは優しく抱いてくれる。
それでも、今回だけは・・・。
ーーー言ったら納得してくれるだろうか。
どう言ったら・・・。
ここで、はたと気付く。
ーーーそういえばオレ、陛下と話した事、あんまりない。
いつもされるがままになってた。
国王に仕える身として、逆らうなど考えた事もなかった。
嫌と言えば、許されただろうか。
思考が纏まらないままに、執務室の前に着いてしまう。
衛兵の冷たい視線にも気付かず、しばらく立ち尽くす。
「入らないのか」
そう声をかけられて、右に立つ衛兵を見上げる。
筋肉質な細身の衛兵に見覚えがあった。
ーーーこの人、竜騎士隊にいた人だ。異動になったんだ・・・。
この国で竜騎士は最高の称号だ。
竜騎士の中でも、最前線で戦う翼竜ワイバーン隊は、国中の憧れ。
ーーー自分から異動願を出した訳じゃねぇよな?・・・怪我・・・?
シンの視線を追って、衛兵の視線も自分の足に向いた。
「ああ、先の北方領防衛戦でな」
ーーーあ、前々回の契約の時、オレも参加したやつ。
「お前が、参加したせいで・・・」
ーーーオレが参加したせいで・・・?
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