序章

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何か物音がしたとか、人の気配があったとか、そんな事ではない。 むしろ逆だった。 いつもなら腕の中に眠っているハズの愛おしい影がいない。 魔法契約を結び、その契約が切れるまで一緒にいると誓った、黒い小さな魔法使い。 時折そんな事もある。 だがその日は、そう、虫の知らせか、胸騒ぎがした。 侍従を起こすこともなく、寝巻きの上にガウンを羽織る。 ーーー違和感ーーー 何に対しての違和感なのかも定かではない。 胸騒ぎが高まる。 ランプを片手に部屋を出た。 ーーーあの子の部屋は・・・ 向かう先の部屋から、灯りが漏れだしている。 どう見てもランプの灯りではない。 ーーー魔方陣! 思い当たった時には駆け出していた。 扉を押し開いた先に、魔方陣に囲まれた二つの黒い影。 「シン!」 はっと上げた顔は、今にも泣き出しそう・・・。 「ゼナ・・・、ダメだ!来るなっ!」 声をあげた小さな影を、背の高い方が抱き寄せる。 制止の声なんか聞こえない! 感情に任せて小さい影の腕を掴んだ。
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