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「・・・っ!うっ・・・ぇぇえ・・・っ!」
地に足が着いたと思ったとたん、座り込んで嘔吐(えづ)いてしまった。
「ゼナっ!バカだろ!死ぬよ!?」
罵声と裏腹に、黒髪黒服の魔法使い、シン・シミーヤは優しく背中を撫でる。
ガウンの袖で口元を拭うと、ゼナフィラは掴んだままの腕を少し緩めた。
シンに逃げる素振りがなかったからだったが、同時にシンが痛みを覚えているのかと思ったのだ。
「・・・まったく、あなたの意識操作は上達しませんね・・・」
柔らかい声音が降ってきた。
先程、シンを連れて行こうとした・・・というより、連れてきたであろう人物の声と分かるや、気分の悪さも吹き飛ぶ。
「何者だ!貴様は!?」
小柄な体を自分の後ろに隠すようにしながら、立ち上がった。
一瞬、足元がふらついたが後ろからシンが支えてくれる。
声と同じく、柔らかい印象の男だった。
亜麻色の髪はふんわりと巻き、その優し気な瞳は敵意の欠片すらない。
少し、力が抜ける。
そうして辺りを見渡せば・・・。
「・・・どこだ、ここ?」
さっきまでは夜だった。それも真夜中。
晴れ渡る空に、転々と浮かぶ島。
ーーー島!?
かくいう自身の立つ地も、大きな浮き島なのか、眼下に広大な大地を広げていた。
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