イバーダード

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部屋は寝室だった。 奥のクローゼットからルトが顔を出す。 「ご逗留の際のお召し物はすぐに仕立てさせますが、今日のところはこちらでいかがでしょうか?」 すっきりしたシルエットのスーツを差し出す。 さして着るものに頓着しないゼナフィラは、何も考えずに受け取った。 「・・・さっき、ルトは意識操作、と言っていたな。あれは・・・」 「・・・お察しの通りかと」 あまり、考えたくなかった。 「私が、朝まで起きない様に・・・?」 「そうですね。出来れば一時的にあの子の事を忘れていただければ最高でした」 えげつない事をしれっと言い放つ。 「まあ、あの子に記憶操作させたら百か零かですからね。そんな賭けはさせませんけど」 何の悪気も見せずに言う参謀。 「あの時、シンが泣きそうに見えた」 「光の加減でしょう?」 気のせいですよ・・・。 「・・・と、言えたら良かったのですが・・・」 ゼナフィラの後ろに回り、着替えを手伝う。 視界から外れたため、その優し気な顔が曇った事に気付かない。 「ゼナフィラ様にとって一晩でも、シミーヤにとっては1年です。会えない時間が、長い」 「シンが、寂しく思ってくれた、と?」 「まぁ、有り体に言えば」 思わず小躍りしたい衝動に駆られた! いつも澄ました顔で自分と接するシンが・・・!
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