47人が本棚に入れています
本棚に追加
部屋は寝室だった。
奥のクローゼットからルトが顔を出す。
「ご逗留の際のお召し物はすぐに仕立てさせますが、今日のところはこちらでいかがでしょうか?」
すっきりしたシルエットのスーツを差し出す。
さして着るものに頓着しないゼナフィラは、何も考えずに受け取った。
「・・・さっき、ルトは意識操作、と言っていたな。あれは・・・」
「・・・お察しの通りかと」
あまり、考えたくなかった。
「私が、朝まで起きない様に・・・?」
「そうですね。出来れば一時的にあの子の事を忘れていただければ最高でした」
えげつない事をしれっと言い放つ。
「まあ、あの子に記憶操作させたら百か零かですからね。そんな賭けはさせませんけど」
何の悪気も見せずに言う参謀。
「あの時、シンが泣きそうに見えた」
「光の加減でしょう?」
気のせいですよ・・・。
「・・・と、言えたら良かったのですが・・・」
ゼナフィラの後ろに回り、着替えを手伝う。
視界から外れたため、その優し気な顔が曇った事に気付かない。
「ゼナフィラ様にとって一晩でも、シミーヤにとっては1年です。会えない時間が、長い」
「シンが、寂しく思ってくれた、と?」
「まぁ、有り体に言えば」
思わず小躍りしたい衝動に駆られた!
いつも澄ました顔で自分と接するシンが・・・!
最初のコメントを投稿しよう!