同級生

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跳び箱代わりの、地面に半分埋められたタイヤを机の代わりに、私達は恐る恐るページをめくりました。 今になって思い返して見れば明らかに児童向けのソフトな内容の心霊オカルト本なのですが、当時の私達にとってそれは最強に恐ろしい禁断の書に思えたのでした。 「うわあ」 「こわーい」 決して大袈裟ではなく、本当に怖すぎて、子供心にも今夜ひとりでトイレ行けるかな、なんて心配になったものでした。 文字通りにガタガタ震えながらふたりで読んでいると、M子ちゃんが、大袈裟な仕草で私へ抱きついて来ました。 そして、M子ちゃんの唇が私の唇に重なって来たのです。一瞬でした。これが十年後の出来事であれば、私はそれなりの対応が出来たのだろうと思います。 いや、十年後であれば、むしろ私の方からM子ちゃんにキスをしていたはずです。 しかし、当時の私は七歳になったばかりであり、M子ちゃんの行動は想定外であるばかりか、まるで理解不能な事でした。 今のは「チュー」なのだ。 そうは漠然と思っても、子供だった当時の私には、M子ちゃんを思いやる事など出来ぬ話でした。 私は、唇を右手でゴシゴシ擦りながら立ち上がりました。M子ちゃんを睨んでから背中を向け、走ってその場を離れました。 走りながら、私は後ろを振り向きました。 幽霊の本が、地面に落ちていました。 そして、そのすぐそばにM子ちゃんが下を向いて立っていました。
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