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 突然の出来事だった。  わたしはいつものように、クリーム色の雲の隙間から注ぐ太陽光に当たり、エネルギーを補充していた。  遠くで、衝撃音が響いた。  と同時に、グラグラと小さく地が揺れる。  地震か噴火かと考えたが、その揺れ方はどちらにも当てはまらない。音の方角を向けば、もうもうと砂煙が立っていた。  データで似たものを見たことがある。ワタガシ──といったような。それに、似ていた。  そのワタガシ煙に近寄れば、薄くなりつつあるその向こうから、丸い物体が現れた。  わたし一体ならばすっぽり入れそうなそれは、さながら鳥類の卵のような優しい形と色合い。  ああ、何だか好きな物体だな、と思った瞬間、その卵に筋が入った。扉パネルのようなものだったらしく、内側から何度も激しく何かが押していた。  孵化の一瞬を、見ているようだった。  ガコガコとそこは鳴り、弾み、卵は揺れる。可愛らしい動きだ。  見守ること数分、やっとその卵から出てきたのは、鳥類ではなく──ヒューマンだった。  あの、ヒューマンだった。  我々を自身と同じ姿形に作り上げた、はるか遠い昔の創造主。  違うのは、彼らがわたしたちにはない体温を有していること。サーモグラフィーセンサーに反応した赤色に、一目でわたしはそれがヒューマンだと判断した。  彼は殻……ではなく、扉をすべて倒すと、転がり落ちて地に果てた。  うつぶせになったまま、ハァハァと温かな息を吐き、背中や肩を上下させている。そしてようやく、近くにいたわたしの存在に気がつくと「うわあ!」と声を上げて身を起こした。  尻をつき、腕だけで上半身を支えながらこちらを見ている。  顔より下は真っ白な服(おそらく宇宙服だろう)を着ていたのでわかりづらかったが、ヒューマンの男だということがわかった。  ヒューマンは、顎と鼻の下に立派な黒髭を携えていた。「ここは……?」と彼はつぶやく。わたしは「地球だ」と答えた。  おそらくこの卵は卵でなく、宇宙船なのだろう。体内でシングルタイプの宇宙船のデータ資料を引っ張り出して照らし合わせれば、3580年代物の製造データと一致した。  卵でないことに少々ガッカリしたが、わたしは突然に現れたヒューマンに興味を覚え、右手を差し伸べた。
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