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「はい、今は。昔はまだ他にもいたのですが、彼らは充電不足や不幸な事故で、すべて壊れました。わたしが最後の一体です」
わたしの知りうるすべてを話し終えると、ドッドは「そうか」とだけ吐き出し、目の前の丘を眺めた。
黄土色の空に映える、濃茶色の土の丘。
遙かなる古代の記憶データから、そっくりな色合いがないかを探せば「コーヒー」なるものが照合された。ヒューマンが好んだ飲料だそうだ。
「コーヒーみたいな色ですね」
「……じつは、飲んだことないんだよね」
開拓星ではコーヒーは作ることができなくて、持ち込んだものはすべて、親が飲み干してしまったとドッドは言う。残念な話である。
そうして、私はドッドと過ごすことが多くなった。
日中、彼は物珍しそうに地上を歩き、景色を眺め、物色し、暇になればわたしと会話した。寒くなる夜は拾ってきた毛布に丸まり、暖を取るために火を生み出した。
枯れた木を寄せて、つけられた灯火。
やはり創造主なるヒューマンは、美しく怖いものを生み出す。
夜に、彼と一緒に過ごす時間がわたしは好きだった。
それはこの火というものを見られる唯一の時間だったし、彼が楽しそうに日中のことを語ってくれることが、わたしも楽しかったのだ。
「モノって案外、残っているもんだね。今日は大昔の衣類を見つけたよ。マリアにあげるね」
そう言ってドッドがわたしにくれたのは、くすんだ青色のワンピースだった。
わたしは普段、カーキに近い色の保護用布を身にまとっていたのだが、それとはまた異なる形と色だ。動きやすそうではあるが、保護性は低そうであった。
しかし、なぜかそれを与えられたことがわたしは嬉しく、不自然にも口角が上がる。
「着てみます」
嬉しくて早く着たかったわたしは、まとっていた布を剥いだ。
すると、ドッドは変な悲鳴をあげ、おのれの目に手を当てる。
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