1/2
前へ
/11ページ
次へ

 ドッドはしばらく元気でいたが、やはりだんだんと体力を消耗していた。  開拓星育ちなのだ。地球環境には慣れていなかったのかもしれない。 「逃げた罰だね」  ドッドは、座ったわたしの大腿部に頭を乗せて寝転がり、弱々しくつぶやいた。 「もともと病弱だったのさ。戦争が悪化するなか、そんなことも言ってられずに出兵したけどね。……怖かった。人に殺されることが僕は、怖かった」  彼は、戦争のことは断片的にしか語らない。  しかしそれを繋ぎ合わせていけば、彼が経験した戦争というものは、かつてこの地球でも繰り広げられていたものと似ていると思った。  きっとヒューマンはどこへ行っても、互いを攻撃し合い、つぶし合う──そういう存在なのかもしれない。 「ヒューマンは、変な生き物ですね」  つい、わたしは言葉をこぼした。 「美しいものをたくさん生み出すのに、殺し合い、それらを破壊しています。なぜですか」 「それを、僕に聞かないでよ……」  ドッドは困って笑う、という複雑な表情を見せて、のぞき込むわたしを見つめてくれた。  乾燥し、色を薄くした唇。  こけた頬。  死期は近い。 「……ドッド、死ぬのですか」  ドッドの額を撫でて、ふと聞いた。  彼は失礼だと思われるその質問にも、ただ笑う。 「死ぬね。でも、死なない」  相反する回答だった。  意味がわからない、と首をかしげたわたしに、彼は弱々しく人差し指を、わたしの目に向ける。 「今も蓄積しているんだろう、僕のこと。データとして、僕は生き続ける。だから死んでも、死なない」 「生きることと、データで残るのは別のことです」 「そうかもしれない。でも違うんだ」  彼は続ける。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加