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3
ドッドはしばらく元気でいたが、やはりだんだんと体力を消耗していた。
開拓星育ちなのだ。地球環境には慣れていなかったのかもしれない。
「逃げた罰だね」
ドッドは、座ったわたしの大腿部に頭を乗せて寝転がり、弱々しくつぶやいた。
「もともと病弱だったのさ。戦争が悪化するなか、そんなことも言ってられずに出兵したけどね。……怖かった。人に殺されることが僕は、怖かった」
彼は、戦争のことは断片的にしか語らない。
しかしそれを繋ぎ合わせていけば、彼が経験した戦争というものは、かつてこの地球でも繰り広げられていたものと似ていると思った。
きっとヒューマンはどこへ行っても、互いを攻撃し合い、つぶし合う──そういう存在なのかもしれない。
「ヒューマンは、変な生き物ですね」
つい、わたしは言葉をこぼした。
「美しいものをたくさん生み出すのに、殺し合い、それらを破壊しています。なぜですか」
「それを、僕に聞かないでよ……」
ドッドは困って笑う、という複雑な表情を見せて、のぞき込むわたしを見つめてくれた。
乾燥し、色を薄くした唇。
こけた頬。
死期は近い。
「……ドッド、死ぬのですか」
ドッドの額を撫でて、ふと聞いた。
彼は失礼だと思われるその質問にも、ただ笑う。
「死ぬね。でも、死なない」
相反する回答だった。
意味がわからない、と首をかしげたわたしに、彼は弱々しく人差し指を、わたしの目に向ける。
「今も蓄積しているんだろう、僕のこと。データとして、僕は生き続ける。だから死んでも、死なない」
「生きることと、データで残るのは別のことです」
「そうかもしれない。でも違うんだ」
彼は続ける。
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