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フードコートを出たタクトたちは残りの二人と合流したのは広場の大時計の下でた。アイドルのパフォーマンスが終わり人が散っていく広場で土原マコと相田ナナはタクト達を待っていた。
マコとナナは新作の服が入った袋に加えハンバーガーの入った袋を両手に抱えた。
「ありがとうタッ君!」
「別にいいよ。マコ姉たちと違って欲しいものがあった訳じゃないし」
四人の中で一つ年上のマコはタクトたちにとって実の姉のような存在。このハンバーガーの代金もマコが出してくれているので、お使いくらいで文句を言う気にはなれないし、むしろお金を出してくれたことに感謝していた。
「みんな買うもの買ったなら帰ろーか?」
マコの背後からヒョッコリ顔を出したナナが一同の顔を順番に見ながら聞いた。タクト達もお互いに確認し、全員の用事が無いのを察すると並んで複合商業施設を出ていった。
高層マンションがギュウギュウ詰めになった街。無機質なコンクリートで覆われた街。彩り豊かな建物はあっても緑は無い。この人工的に作られた居住島には人工物しかなく街路樹どころか花も土もない無機質な島。ここで生活する人間の大多数は自然を見ることなく死んでいく。それが当たり前のことだと思っていた。
「それじゃあまた、月曜日!学校でな!」
四人は別れそれぞれの家へと続く帰路に着いた。茜色に染まった空……いや、天井と言うべきか? 茜色の天井に映された太陽の映像が美しい夕陽になっている。
オレンジ色の光の中を歩いているタクトに鐘の音が届いた。
「何の音?」
今までで一度も聞いたことのない音だ。居住島全体に響くその音はまるで新たな門出を祝っているようにさえ思える。
「うわっ!な、なんだ……?地面が揺れる!?」
海の上に建造されたこのドームで暮らす人にとって地震は無縁の存在だった。勿論、海の上なので波に対しても備えは万全で巨大な島が揺れることはあり得ないハズだった――。それでも実際に立っていられないほど揺れ、茜色の世界を真っ白な光が覆っていく。一瞬で世界が白く染まりタクトの意識もそこで消えた――。
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