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綺麗に畳んだコートを抱えセシリアと会った牧場に来た。外から見ただけではセシリアの姿を見つけられず中に入った。今日は放牧させていない牛が牛舎の中で干し草を貪っている。
「あの、すいません」
カグヤは牛たちに干し草をあげるため忙しいそうに歩き回る男性を引き留めた。その人はセシリアの父でこの牧場の主。彼に聞いたところセシリアは自警団の方に行っていて借りたコートも彼女個人のものだそうだ。
牧場を後にしたカグヤは役所に来ていた。役所の裏手には自警団の頓所が併設されている。役所にはハンター向けの依頼が寄せられる。自警団兼ハンターの彼らには都合の良い場所だ。頓所の前には30人以上が整列し掛け声に合わせて素振りをしている。
「どうしたんだ、嬢ちゃん? 誰かに用事か?」
セシリアを探すカグヤに気が付いたのはコルガだ。掛け声を止め代わりに¨10分休憩¨と言って団員を休ませた。
「セシリアさんを探しているんですけど?」
「セシリア? オーイ! セシリアちょっと来い!」
コルガが呼ぶと最後列にいたセシリアが立ち上がった。よく躾られた犬のようにキビキビとした動きで駆け寄って来るとコルガの前で立ち止まった。
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