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出会いと出逢い
「早く……会いに来て……」
孤独とはこの世界のことだと薄い桃色の髪をした少女は思った。この世界に来れば呪いから逃れることが出来ると聞かされていたが、それは間違いだった。この世界はあの世界での呪いより苦しい。身にまとわりつく闇はどれだけ払っても決して離れることはなく、少女を蝕んだ。どこまでも続く闇は少女から生きる気力を奪い、永遠に続く静寂が心を引き裂いていく。
¨ここから出して¨と何度も叫んだ――。¨誰かと話したい¨と何度も願った――。けれど、それは叶わなかった。神も仏もこの世界にはいないと悟ると闇は絶望へと姿を変え、少女を淵に引きずり込んだ。このまま闇の中で孤独に死んで行くのだと全てを諦めた。だけど、それは違っていた。絶望の淵で数え切れない時間を過ごしていた少女の前にキラリと光が射した。
その小さな光は瞬く間に大きくなっていく。少女は目を細め、ゆっくりと立ち上がった。神も仏もいない世界に注がれた救いの光に手を伸ばすとそこにはガラスの壁があった。その壁の向こうに広がる色鮮やかな世界。殺風景だけど生活感に満ちた部屋。それは少女が失ったものだった。
「おっ!始まった。」
久しぶりに聞いた男性の声。ガラスの向こうに現れた男性。年齢は10代後半だろうか。
「はじめまして!僕は月星タクト。君は?」
誠実な笑顔を浮かべたタクトに微笑み返そうとした。でも、長い間この闇の中で孤独に過ごしていた少女の表情筋は言うことを聞かず、変な笑顔になってしまった。
「はじめ……まし……て?えっと……カグヤで……す」
掠れた声、続かない言葉にカグヤは不甲斐なさで自己嫌悪に陥った。それでもタクトという少年が作ってくれたチャンス。絶対に取り零したくなかった。
「私はカグヤ。カグヤ・ユーハストリア!よろしくお願いします」
この世界で与えられた役割をこなすため、そして孤独から救ってくれたタクトに報いるため顔を綻ばせた。
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