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呪いと少年・1
呪われた証の黒い薔薇。気になるが彼女はあまり触れて欲しくなさそうな反応を示す。聞きたい気持ちをグッと抑え、空を旋回する鳥を見る事で気を紛らわした。
「もうそろそろだよ?」
カグヤの見たという煙。火の手が上がった場所が近づいているという。カグヤと離れるのは寂しく感じるが、元の世界へ帰れるかと思うと気分が高まりタクトの歩調が早くなる。
しかし、その期待は直ぐに無駄だったと判明した。最初に嫌な予感がしたのは風に乗って流れてくる焦げた匂いを嗅いだときだ。それから数百メートル歩いたところで現実が突き付けられた。
「どうなってんだよ……」
少なくとも十数棟は並んでいたであろう家に本来の面影など残っていない。焼き崩れたのか崩れてから焼けたのか分からないが、細い柱だけでなく太い柱まで炭と化して潰れていた。
「タクト! 見てこれ」
人の2倍強の大きさの足跡がこの小さな集落の至るところに残っている。
「モンスター……だよな?」
「うん、間違いなく……ね」
「とにかく誰かいないか探そ?」
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