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ロジエラ
夜が開ければ朝になる。沈んだ太陽がまた顔を出す。それはこの世界でも当たり前のことだった。ドームの空気清浄機で空気から不純物を取り除いている。けど、この世界にそんなものはない。それでも朝の空気は澄んでいて肺に一発に溜め込んで吐き出すと気分までスッキリ出来た。
「そろそろ出発しよ?」
カグヤに促され朝日と対峙していた体をカグヤの方へと向ける。
「どっちへ向かう?」
360度見てみるが人工物らしき物は全く見えない。それはカグヤも同じのようで¨人のいる方は分からない¨と前置きをしてから森の方向を指差した。
「あの森を進もう!」
「森を?」
「うん。歩きにくいし、見通しも悪いその上モンスターだって出るから危険だけど木の上に登れば遠くまで見えるし何より最優先にしないといけないのは食料の確保」
危険なら止めた方が良いと言おうと思ったのだが、食料の確保と聞き口をつぐんだ。腹の虫が鳴くほどではないが空腹感が出始めているし、危険な森に入ってまで食料を得ようということは人のいる場所まで時間がかかる可能性があるということだ。
「森に入れば食料があるの……?」
「少なくともこの原っぱよりは調達しやすいよ」
「分かった。それじゃあカグヤの言う通り森へ向かおう!そんで、鹿とか大物を捕まえよう」
「ふふっ、大物狙いならいっそモンスターでも狙ってみる?」
クスクスと小さく笑う愛らしい笑顔を浮かべたカグヤ。その笑顔を見るだけで気分は上向きになるし、何より安心出来た。
¨この世界で一人ボッチ¨じゃないのだと…………。
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