ムンクニ到着

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ムンクニ到着

 ムンクニの首都、タントラはガーデンとは似ても似つかない場所だった。 独り乗りの駆動車が未舗装の道路で行列を作り、軒先に腰かけが並べている商店があり、老人がボードゲームに興じている。 古びた建物は鮮やかな色の看板が掲げられる一方、中央部は開発が進んでいるらしく、ガーデンによく似たビルが疎らに立っている。  港についてすぐ、若い男が近づいてきた。 首から服の下に忍ばせていた、身分証明証を取り出す。スピエルドルフ商会の職員らしい。 名前はフレディと記されている。 「商会の事務所に案内します。ついてきてください」  建物はスルハン河を渡った、タントラの南部に建てられていた。 4階建ての壁を白く塗った正方形に近いビルで、鋸刃のように何度も折れ曲がった屋根が、蓋のように被せられている。 2階の会議室に通され、ゾーラ島侵入作戦についての説明を受けた。 「西のノンペン港に、船を回してあります。すぐに出ますか?」 「出ますか、ってアンタらは手を貸してないのか」 「…これまで80名を超える戦闘員を送り込みましたが、吸血鬼になって帰ってきた者以外、生存者はいません」 「それで俺任せね。大した組織だ」  アレスが感心したように言うと、フレディは眉根を僅かに寄せた。 「じゃあ、もう行くから。準備だけは抜かりなくやっておいてくれよ」 「はい。お気をつけて」  アレスは単車――地球で言う大型二輪を購入すると、鼻歌交じりに車輪を西に転がす。 タントラ市を越えると、豊かな緑がアレスを出迎える。最低限の整備がされた山道を走り、2日で西の街ノンペンの港に到着。 ノンペンの預り所に乗ってきた単車を預け、夕暮れを待って船着き場に向かう。商会のメンバーに案内され、船に乗り込んだ。チャッキーに見せられた船より小さい。  海を滑り出した船には、数名の船員が乗っている。 いずれも白い制服を身に着けているが、ネルガルの人間より肌の色が濃く、顔の凹凸が薄い。現地人だ。 「ゾーラ島ってのはどんな所なんだ?」 「大きなスラムがあった場所です。香木や薬草の産地だったのですが、昔は海賊が多くて、それらを取り締まるために砦が建てられたそうですよ。ゾーラ砦って言います。3賢人が出てきてからは、使われなくなったんじゃないかな…」 「ふーん。砦か」 「あ、それとこれを…」
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