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「では先に冷蔵庫に入れておきましょう。更衣室へ行かれるでしょう」
候江がほくほくとした顔で厚みのあるハンバーグに似た手のひらを差し出すので私は少し慌ててしまう。
「いえ!私が」
「いえいえ。これしきのこといいのですよ。お貸しくだされ」
「すみません。ではお言葉に甘えて」
「もっと甘えてくださればいいのですよおたまさん。共にこの図書館を支える同胞なのですから。あ、そうです。昨日入国審査を通った勇者の方が今日の午後こちらへ登られるようですが大丈夫ですか」
同胞ではなく同僚なのでは。しかしそれより候江の心配げな顔にぎくりとする。
「はい。大丈夫だと思いますけど…すみませんなにかイレギュラーなことありましたか」
あの女勇者が脳裏に浮かぶ。またあのパターンの転生者だろうか。
「いえ特には」
候江は微笑む。
「ただまだ混乱されているご様子と聞いているので。もし話がうまく通じないときには某を呼んでくだされ」
「そういうことですか。ありがとうございます。もしもの時はよろしくお願いします」
「もちろんですよ。ご無理なされず呼ばれますよう」
私が手渡したプリン入りのコンビニ袋を心底大切そうに抱えた候江は、4階の事務所へ向かう。そこに職員用の共用冷蔵庫がある。
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